大阪地方裁判所 昭和28年(ワ)3701号 判決
「証人A及び同Mの各証言並に原告本人の供述を綜合すれば、原告はかねてから被告組合の外務員であるAから被告組合に預金すべきことを勧誘されていたので、昭和二十八年六月二十二日被告組合に赴き預金係の窓口に於て右Aに対し現金二十四万円と原告の印鑑を提出して預金方を申入れ、被告組合所定の手続により普通貯金として預け入れられたこと、右Aはその際被告組合所定の預金払戻請求書数枚の氏名欄に原告の印鑑を窃かに押捺して置いたこと、原告に交付すべき預金通帳は原告の申出により原告がこれを定期預金に変更するかどうかをきめ、その申出がある迄右Aがこれを預ることになつたこと、右Aは他に流用するため、原告の印鑑を押捺して置いた右預金払戻請求書に擅に原告の氏名を冒書し原告名義の金三万円及び金二十一万円の預金払戻請求書を偽造し、予て預かつていた右普通預金通帳と共に被告組合の係員に提出して本件預金払戻請求をし、被告組合の支払拠当責任者であるMをして真正の払戻請求であるように誤信させ、昭和二十八年六月二十二日に金三万円、同月二十三日に金二十一万円を同人に払戻させたことをそれぞれ認めることができる。そうすると、被告の右払戻は債権の準占有者であるAに対してした弁済といわなければならない。よつて進んで右払戻が善意の弁済になるかどうかについて考える。元来弁済の善意なりや否やは当該支払担当者の善意又は悪意のみによつて決すべきでなく、弁済の全過程を通じて判断すべきものと解すべきところ、右払戻は被告組合の外務員であるAが原告名義の預金払戻請求書を偽造行使したのに基くものであることは既に前段認定の通りであるから、被告組合の支払担当責任者であるMが善意であつたとしても、全体として観た被告組合の右払戻はこれを善意の弁済と見ることができない。」